がんや疾患の豆知識

肝炎について

「お酒を飲まないのに、肝臓が悪くなったのは、どうしてでしょう」と、よく聞かれますが、日本では、肝臓病の70%以上は、肝炎ウィルスによるものです。

現在、わが国での、B型感染ウィルスの持続感染者は150万人、C型肝炎ウィルスの持続感染者は200万人と推定されていますが、慢性肝炎は自覚症状が殆どなく、症状が出た時には、既に肝硬変や肝がんになっていることがあります。
 

ウィルスの型 感染経路 初期症状 慢性化
A型  経口(飲食物)  黄疸、発熱など  ほとんどない

B型

 主に性行為
 母子感染、
 血液感染は
 少なくなっている

 倦怠感、
 軽い黄疸など。
 無症状のこともある。

 10%は慢性化。
 一部は肝硬変や
 肝がんに。
 成人感染・・・しない 

C型  血液、体液、
 医療行為
 多くは無症状。
 倦怠感、軽い黄疸など
 50%~80%は
 慢性化。
 一部は肝硬変や
 肝がんに。
D型  常にB型と
 重複して感染する
 B型に類似  B型に類似
E型  経口(飲食物)  A型に類似  ほとんどない

 

劇症肝炎

劇症肝炎は、急性肝炎のうち、もっとも重症な型であり、広範な肝細胞の壊死により、急速に肝不全症状が現れる肝炎です。 原因は、肝炎ウィルス感染によるものが大部分を占め、主要症状は発熱、黄疸、意識障害です。 予後はきわめて悪く、致命率が80~90%に及びます。
 

肝硬変

肝硬変は、種々の肝障害の終末像で、結合組織の増生などを伴う、慢性の進行性病変です。 原因は、肝炎ウィルス、アルコール摂取、中毒などで起こりますが、我が国では、肝炎ウィルス感染による慢性肝炎に由来するものが多くなっています。 主要症状は、黄疸、腹水、脾腫で、疑いがあれば、肝機能検査、腹腔鏡検査、肝生検、門脈圧測定などを行います。
 

B型肝炎

B型肝炎には、一過性感染と持続感染があります。 一過性感染とは、免疫力が十分な状態で感染した場合で、通常、健康な成人が感染した場合です。 この場合、実際に発症する割合は20~30%と推定され、発症した場合がB型急性肝炎です。 急性肝炎では、約2%が劇症肝炎となり高率で死亡します。
持続肝炎は、主に免疫系が未成熟の状態で感染した場合で、乳幼児期の感染と母子感染があります。 現在、衛生環境の改善などにより、乳幼児期の感染は、殆どなくなり、母子感染がその殆どを占めています。 持続感染の場合、キャリア(ウィルスと細胞が共存している状態)となり、個人差が大きいのですが、ある時期に生体がHBV(B型肝炎ウィルス)を排除しようとした場合に、肝炎を発症します。 多くは慢性肝炎となり、一部は肝硬変及び肝細胞がんへと進みます。
 

肝がん

現在、我が国の肝がん死亡者数は、年間3万人を超え、がん全体の死亡者数、第3位となっています。 肝がんの約95%が、肝炎ウィルスが原因で、そのうち、C型肝炎ウィルス感染者は80%、B型肝炎ウィルス感染者は15%であることがわかってきました。 HCVの持続感染が起きると、一部は肝炎が増強・持続し、C型慢性肝炎に移行します。 この中から、さらに肝硬変、致命率の高い肝細胞がんへと、進展していくことがあります。
 

慢性肝炎の診断と治療

《診断》
肝臓は「沈黙の臓器」といわれ、ほとんどの慢性肝炎は、自覚症状がありません。
健康診断や献血、他の病気の時に肝機能検査の異常や、肝炎ウィルスの検査によって指摘される事がほとんどです。
肝臓の細胞の破壊を示す血液検査値(GOT、GPT)の上昇、慢性肝炎の後期や肝硬変では減少する血小板の値が有益な検査になります。
必要な場合には、肝臓の組織の変化を見るための検査(肝生検)を行うこともあります。
 
《治療》
慢性肝炎の治療は、原因となっている肝炎ウィルスを血液中から排出する目的でインターフェロンが中心になっていますが、約30%の人にしか効果がありません。
しかし、最近ではインターフェロンと抗ウィルス剤との併用によって改善が期待できたり、インターフェロンの治療もウィルス量を減少させる目的で長期間にわたって使用できることになり、肝硬変への進展を抑制できる可能性ができています。
その後は、長い時間をかけて正常肝に向けて改善します。